イヤモニの話 その4:思い出深い機種、Shure E2とER-4

思い出深い機種は、やはりShureのE2とEtymotic ResearchのER-4でしょうか。いずれも当時個人輸入で入手しましたが、E2のガッツのある音、ER-4のデリカシーのある美しい響きは、今聞いても独特の魅力に溢れています。しかし密閉型という新ジャンルゆえの誤解も。

E2あたりは、特にそのサイズと形状にも起因するのですが、小さい、細い、薄い、曲がりが強い傾向の日本人の耳に納まりやすいものではありませんでした。付属のイヤーチップを駆使しても、耳型/サイズによっては必要な遮蔽が取れず、「スカスカ」と表現されることが多かったのも事実です。

また密閉が高まれば高まる程、ダイナミック型はダイヤフラムと鼓膜とのスティッフネス整合を取ることが難しくなります。1発でローからハイまでを出そうとすると、必然的にダイヤフラムを大きく、薄くする必要がありますが、そうすると残存する外耳道容積に対し、ダイヤフラムの強度確保ができません。

そこでちょい厚め/小型のダイヤフラムにトルクをかけて駆動させる方向となりますが、どうしてもハイ落ちが避けられず、密閉で得られる外耳道封鎖効果により上昇したローとのバランスで「モコモコ」扱いされるという不幸もありました。全く同じ機種がこうも正反対の評価を受けた事は興味深い所です。

E2については、確かにもーちょいハイが欲しーなと、えーとKnowlesのなんだったかな・・・。バランスドアーマチュア型を見繕って、2ウェイ化したりなんかしちゃったりしましたな。その後、Ultimate Earsからsuper fi.5 pro EBが出たのもさすが鋭いところです。


バランスドアーマチュア型の雄、Etymotic Researchにも、同形式ならではの弱点が。元々補聴器用として利用されていたBA型は、高出力、高耐久性、密閉空間での良好な動作、超小型など、沢山の利点がある反面、ダイナミック型に対しレンジが狭く、コストが高いという問題があります。

Etymotic Reserchのアプローチとしては、小型BA型をなるべく鼓膜に近い位置で動作させることで、高域減衰を最小限とし、瑞々しい音を高いレスポンスで再生することを狙っています。またバイノーラル録音を前提としたモニターとしての位置付けも、こうした設計の理由と考えられます。

外耳道音響条件の個人差を減らすことで、設計した音質バランスを提供する上でも有効な手法ですが、今度はサイズによる適用ユニットへの制限が。小型ユニットでゆとりのある低域を再生するため、一般のスピーカーではバスレフレックスといった手法がありますが、構造上イヤーモニターでの適用は不可に。

それならば大型のユニットをとなると、高域の低い周波数帯からのロールオフと、外耳道形状による設置位置規制が問題となってきてしまいます。このあたりは一長一短があり、各社の考え方が出る所ですが、Westone/Shureを中心に、BA型をマルチで動作させる方法が主流となってきます。

とは言え音質的な面でシングルならではの良さも。ER-4やShure E3c、E4c、Ultimate Ears super fi. 3 studioなど銘機も多く、特にE4cは今でもお気に入りの一台です。ルックスも良かったなー。

続く